☆ 加藤 登 ☆
東海大学海洋学部水産学科教授。2002年4月、食品メーカー「紀文」の研究所より同大学に赴任。国内における国際的な食品衛生管理「HACCP」のデザインを担当した水産食品業界の権威。
ブリは、ワカシ、イナダ、ワラサ、ブリと呼ばれる出世魚で、関西では、ツバス、ハマチ、メジロと呼ばれています。市場でのブリとハマチは、ブリが天然物で、ハマチは大きさに関係なく養殖ブリの代名詞として流通しています。養殖と天然の見分け方は、天然物は身が締まっており、肉色はピンクで、尾の付け根が細くくびれています。一方、養殖物の身質は色が白く、やや脂っこくて尾の付け根が太くて丸いなどの特色があり、これは餌と運動量の違いによるものです。「鰤は寒鰤」と言われるように冬が美味なのは、11月〜12月の脂肪量が10%〜30%と多いからです。
一般成分での比較 (100g中、5訂日本食品標準成分表)
エネルギー 257kcal
水分 59.6g
たんぱく質 21.4g
脂質 17.6g
炭水化物 0.3g
灰分 1.1g
ナトリウム 32mg
カリウム 380mg
カルシウム 5mg
マグネシウム 26mg
リン 130mg
1mg
一般成分のうちたんぱく質は20%程度で安定していますが、残りの80%は水分と脂質で、特に脂質は、季節や年齢、部位等によって大きく変動します。ブリの脂質には、EPA(IPA)が898mg/100g、DHAが1,785mg/100gと多く含まれています。EPA(IPA)(エイコサペンタエン酸=イ−コサペンタエン酸(国際的)の効用は、血管を拡張させ血が固まるのを防ぎ、脳梗塞や心筋梗塞を防止する作用や血圧を下げる作用があります。また、血液中の中性脂肪を低下させ、HDL(善玉コレステロ−ル)を増加して、LDL(悪玉コレステロ−ル)を抑える作用や抗アレルギ−作用、脂肪細胞の増加を抑える作用などが知られています。



ブリには、DHA(ドコサヘキサエン酸)も多く含まれています。DHAの効用は、血液中のコレステロ−ル濃度を低くする作用や動脈硬化を防ぐ作用、ガンを抑える作用、脳細胞を活性化する作用があり、痴呆症のボケ防止にも効果があるとされています。コレステロ−ル量(C)も72mg/100gありますが、これを抑制するタウリン量(T)が187mg/100gあり、このT/C比率が2倍以上あればコレステロ−ルの心配はなく、ブリの場合では187/72=2.6倍となっています。このタウリンは、視力を増強する作用などがある大切な成分でもあり、血合肉には673mg/100gと多く、普通肉では15mg/100g程度と部位により差があります。
ビタミン類での比較 (100g中、5訂日本食品標準成分表)
レチノ−ル 50μg
ビタミンD 8μg
ビタミンE 2.0mg
ビタミンB1 0.23mg
ビタミンB2 0.36mg
ナイアシン 9.5mg
ビタミンB6 0.42mg
ビタミンB12 3.8μg
ブリには、レチノールやビタミンDやEなどのビタミン類が多く含まれています。ビタミンDは、カルシウムの吸収を助け、骨粗鬆症(こつそしょうしょう)を防ぎ、ビタミンEは、生体膜を活性酸素から守る働きがあり、ガンや老化を防止する効果があります。また、血管壁を丈夫にすると言われているPOA(パルミトオレイン酸)の含有量も多い魚と言えるでしょう。
ブリに含有される主な栄養素に関連する病気に対する働き
血栓症の予防 EPA、DHA
動脈硬化の予防 タウリン、EPA、DHA
毛細血管の強化 POA、ビタミンE
視力低下の防止 タウリン、EPA、DHA
高血圧の予防 カリウム、EPA、タウリン
骨軟化症の予防 ビタミンD